工事現場のICT活用について

建設業界における「働き方改革関連法」の2024年適用に向けて、政府は多様な施策を推進しており、その一環としてICT(Information and Communication Technology/情報通信技術) 活用を推奨しています。

そこで本記事では、さまざまな改善事例の中でも特に、デジタル変革が進みづらいとされる現場におけるICT活用の事例についてご紹介します。難しく考えられがちな分野ですが、身近なところから進めていくことで、一人一人の作業効率や生産性の向上へとつながっていきます。

どうぞ自社の現場の環境改善にお役立てください。

環境改善事例

施工ミスのチェック

課題

現場でのトラブル発生は極力避けたいところですが、施工ミスなどの不具合が発覚して、トラブルになることは往々にして起こります。
ですが、近くに上司や同僚がいることは稀であり、工事責任者以外のほとんどは作業員なので、対応できる人員は限られています。現場は市街地から山奥までさまざまなところにあるため、場所によっては応援者がすぐに駆け付けられないこともあるでしょう。
また、応援に行くとしても、電話やFAXなどのアナログな連絡手段では、現場の状況が正確に把握できず、誰を向かわせれば良いか、バックアップとして何をすべきかを判断できずに、混乱に陥っている現場がまだ数多く見られます。
さらに、こうしたトラブルは最悪の場合、施主からの訴訟に発展するケースもあり、自社に甚大なダメージを与えかねません。トラブルを未然に防ぐためにも、こちらの課題には早急に取り組む必要があります。

対策

現場のトラブル発生時に迅速に対応する方法として重要なのは「正確な情報共有」です。特に施工ミスの場合は、詳細な状況報告が必要になります。
アナログな媒体は一見楽で早く伝わりやすいと思いがちですが、ミスが生じやすく手戻りの原因にもなり、何より情報のリアルタイム化や複数人とのコミュニケーションに向いていません。

そこで登場するのが、ICTのひとつであるビジネスチャットです。
ビジネスチャットとは、業務利用を目的として開発されたチャットツールです。社内外のメンバーとグループ単位でテキストや図面、現場写真、資料を安全にやりとりできるツールなのですが、トラブル発生時にも関係者全員にリアルタイムで報告でき、施工ミスなどの問題点を写真とメモで共有できます。

上司や本社のスタッフ、現場担当者、設計担当者などグループに含まれる複数の関係者が状況を確認できるため、是正指示を出しやすく、また多くの意見や知恵が合わさり、組織としての正しい対応が可能になります。わざわざ現場に出向かなくても状況を詳細に把握できるため、移動の手間も削減できます。

ICTをうまく活用し、通常作業の効率化と同様に、トラブル発生時の対応についても準備しておくことをおすすめします。

ビジネスチャット「direct」のおすすめ機能

撮影した写真にその場でメモを書き込んで送信。リアルタイムな指示出しで現場業務を効率化
「directの基本機能/データ共有」

長時間労働の削減

課題

政府は2019年から一般企業に適用された「時間外労働の上限規制」の猶予期間を、建設業界においては2024年4月までとしています。その理由は、建設業界が長時間労働、休日出勤、人手不足などの慢性的な課題を多く抱えており、また早期解決が難しく、一般企業のように規制を遵守することが難しいと判断されたためです。

それほどまでに困難とされるこちらの課題ですが、現場作業は危険を伴うことも多く、長時間労働による疲労が蓄積すると命の危険にさらされることもあります。従業員の安全を守るためにも、働き方改革を推進していく必要があります。

対策

従業員に残業抑制を求めるだけでは、解決が難しい長時間労働の削減。
重要なのは「残業を否定するのではなく、必要な残業はしやすく、不要な残業を削減する」仕組みを作ることです。
そのために企業は、誰が・どんな理由で・どのくらい残業をしているのか、つまり「残業実態を見える化」する必要があります。個々の仕事の偏りを把握することで初めて、的確なマネジメントをおこなうことが可能となり、従業員の意識改革へとつなげることができるのです。

ビジネスチャット「direct」を活用したおすすめツール

限られた時間で成果を上げる意識を醸成、長時間労働の是正支援ソリューション
「direct Smart Working Solution(direct SWS)」

朝礼時間の短縮

課題

当日の作業や立ち入り禁止エリアの周知など、現場の安全を守る毎日の重要な朝礼。
しかし、会場から持ち場までの人員輸送に時間がかかり過ぎる、狭い敷地で会場確保や三密回避が難しいといった問題に頭を悩ませる現場も数多くあります。また、毎朝図面を印刷したり、朝礼看板に掲示する作業にも時間を取られます。
これらの結果、朝礼が作業員の負担となり、マンネリ化した実効性のないものになってはいないでしょうか。

いま現場内の情報伝達を改善する、新しい朝礼が求められています。

対策

近年、全国各地の現場でデジタルサイネージが導入されるケースが増えてきています。
デジタルサイネージとは、電子看板のことで、ディスプレイを各所に設置し、さまざまな情報コンテンツを流すことができます。昨今はインターネットにつながるデジタルサイネージが主流となり、遠隔からのタイムリーな情報提供が可能となっています。

このサイネージシステムを活用し、朝礼掲示板をデジタル化することで、大規模な現場でも効率的かつ効果的に情報共有がおこなえ、また、多くの関係者が会場に集まることでの感染症リスクも軽減することができます。さらに、急な図面の変更や修正があった場合でもスピーディーに更新がおこなえ、看板の貼り替え作業や図面の再配布も必要ありません。

現場のまとまりは、伝達力で決まります。ぜひICTの有用な機能を駆使し、現場業務の効率化、生産性向上へと役立ててください。

ビジネスチャット「direct」を活用したおすすめツール

スマホやタブレットで手軽に更新!音声や動画も配信できるデジタルサイネージ
「direct サイネージ」

技術・ノウハウの継承

課題

建設業界は今、深刻な高齢化問題を抱えており、熟練者の技術やノウハウを若手に引き継ぐことが急務となっています。しかし、熟練者が引退してしまう前に継承したくても、継承先となる若手や中間層が十分におらず、技術継承が困難な企業は増加傾向にあります。また、たとえ継承者がいたとしても、手間や工数を懸念して引き継ぎを敬遠する熟練者が多いといった課題もあるでしょう。

熟練者の体力的負担を最小限に抑え、適切に技術継承をおこなうためにはどうすべきかを考えるときが来ています。

対策

「ナレッジマネジメント」ということばを耳にされたことはないでしょうか。ナレッジマネジメントとは、従来個人が持っていた経験知識やスキル、ノウハウなどを企業内で共有し、企業全体の生産性や競争力、企業価値を高めていく経営手法のことを言います。

特に技術継承が難しいとされる建設業界においては、このナレッジマネジメントが問題解決の鍵となります。今までは経験することでしか身に付けられないとされていた、熟練者のいわゆる長年の勘を、言語化&図面化しデータで共有することで、技術やノウハウの継承がスムーズにおこなえ、若手教育の手間や費用の軽減にもつなげられるというわけです。さらに、データで共有しておけば、情報の蓄積や検索、更新や整理などの管理もしやすくなります。誰が何に詳しいかも把握しやすくなるため、不測の事態にも備えられ、若手も安心して現場に臨むことができるでしょう。

そして、このナレッジマネジメントのツールを導入するにあたってポイントなのが「誰でも簡単かつシンプルに投稿できる」ということです。細かい情報は確かに後で役立つかもしれませんが、入力や目を通す手間を利用者に押し付けてしまうと、定着させることは難しくなってしまいます。また、建設業界は現場へ直行直帰する場合が多いため「パソコンからしか操作できない」「事務所へ戻らないと投稿できない」というツールでは、利用者の負担になってしまいます。スマホやタブレットに対応していることも重要なポイントです。

熟練者一人一人が身に付けた技術やノウハウは、企業にとっても業界にとっても無形資産です。無駄にすることのないよう、ICTのひとつであるナレッジマネジメントツールを活用し、しっかりと取り組んでいきましょう。

ビジネスチャット「direct」を活用したおすすめツール

現場のノウハウを気軽に投稿できる、オープンな情報共有の場
「ダイレクト2.0/掲示板」

情報漏えいの防止

課題

働き方改革による業務効率化を推進するにあたり、本記事でも述べてきたICTのひとつであるチャットツールなどを、積極的に導入する現場も少しずつ増えてきています。しかし、プライベートで利用しているチャットツールで業務連絡を取り合ってしまっているケースが多く見受けられ、これが近年情報漏洩のひとつの原因として問題視されるようになっています。

現場では日々、大量の図面や写真、従業員や顧客の個人情報など膨大なデータを取り扱っています。これらの情報が外部に漏れれば、自社の信用低下や損害賠償を請求されるなどさまざまなリスクにさらされます。

ICTの利便性を享受しながらも情報漏えいを防ぐためには、従業員や作業員への教育だけでなく、現場のITインフラを整備し、情報漏えいが起きにくい環境を作ることが大切です。

対策

現場の情報セキュリティを強化するために重要なのが、ビジネス専用のチャットツール、ビジネスチャットの導入です。セキュリティ面に十分な配慮がなされたプライベート用チャットツールもありますが、やはりプライベートとビジネスの境界線が曖昧になりやすく、企業の管理が行き届かないため、情報漏えいのリスクは高まります。

プライベート用チャットでの情報漏えいリスクや、ビジネスチャットを導入するメリットについては、下記関連記事に詳しくまとめていますので、ご覧ください。

関連記事

個人チャットをビジネスで使うリスクとは

ビジネスチャットを導入する際にまず必要なのは、管理者が現場の実態を把握することです。実際にどのくらいの従業員や作業員が、プライベート用チャットツールを使用しているのか確認しましょう。その上で、プライベート用チャットツールのビジネス利用禁止や、社外・現場外を含めた利用者の設定、コミュニケーションに関するルールの設定などをおこないます。

また、ビジネスチャットにはさまざまな種類があります。セキュリティが万全なことはもちろんですが、セキュリティ面だけを重要視してしまうと、得てして現場の業務効率を下げてしまうこともあります。現場の意見も吸い上げつつ、自社や現場に合ったセキュリティ対策がおこなえる、最適なビジネスチャットを選ぶようにしてください。

ビジネスチャット「direct」の取り組み

国産ビジネスチャットの「direct」は、お客様の情報資産の保護を徹底し、セキュリティ事故の発生ゼロを目的として、国際的セキュリティ認証取得に関する活動をおこなっています
「direct」のセキュリティに対する取り組み

まとめ

建設業界は今「働き方改革」という大きな課題に向き合う時がきています。

そのためには、建設業界全体が現状で顕在化している課題を正しく認識し、未来を見据えた組織改革に取り組む必要があります。

人や資金といったリソースをどこまで割けるかは、各々の企業や現場によって異なると思いますが、まずは情報共有の効率化、物理的なトラブル対策、社内&現場内教育の簡略化などで、ICT化を検討されてみてはいかがでしょうか。

小さいところからでも無駄を省いていくことで、現場の環境が少しずつ改善し、生産性の向上や、若手の増加といった建設業界が抱える課題に対処していけるかもしれません。

ビジネスチャット「direct」は、現場に特化した機能で、建設業界の働き方改革推進をサポートします。