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顧客との新たなFace to Faceの確立と災害時のBCP対策に活躍

あぶくま信用金庫

  • 理事長
    太田 福裕 様
  • 総合企画部
    経営強化計画推進室長 兼 業務推進部営業推進課長

    岡田 寛 様

あぶくま信用金庫は、福島県浜通り地方を主要営業エリアに、15店舗2出張所(2022年1月現在、原発事故により3店舗が営業休止中)で事業を展開しています。東日本大震災や原発事故といった困難を乗り越え、2020年には創立70周年を迎えました。

同金庫では2021年1月に、信用金庫向けコミュニケーションアプリ「しんきんdirect」を導入。顧客との接点確保や、金庫内の業務効率化にどう活用しているのかを伺いました。

あぶくま信金様 その1 あぶくま信金様 その2

POINT

課題

導入の
決め手

活用効果

震災後、対面でのサービス提供が限界に
導入の決め手はスマートフォンアプリの利便性

太田様:
「しんきんdirect」導入の背景にあったのは、顧客とのコミュニケーション環境の変化です。
信用金庫は、法律により営業エリアが制限される地域金融機関で、もともとの当金庫の営業エリアは福島県でも太平洋沿岸の浜通りでした。しかし、2011年3月の東日本大震災と原発事故により、多くの方が避難を余儀なくされ、当金庫も福島市など中通りまで営業エリアを拡大しました。その後、避難生活の長期化に伴い、避難先に生活基盤や事業基盤を移した顧客は少なくなく、また、当金庫の職員数も大幅に減少しましたが、定期的な移動相談会を開催やディスクロージャー誌の郵送などにより、遠隔地の顧客との関係維持を図ってきました。
しかし、コストと業務運営の負担が高まり、コミュニケーションの在り方を見直す必要を感じていた中で、信金中央金庫から紹介されたのが「しんきんdirect」でした。

様々なコミュニケーションツールの中で「しんきんdirect」を選んだ決め手は2つあります。
1つ目は、スマートフォンでも利用できること。未だに帰還困難区域があるなど、顧客の中には自宅に戻れない方がいます。そうした方は、現在居住を構える住所を第2住所として登録していますが、各地を転々とされることもあり、住所や固定電話番号では連絡がつきにくいこともあります。スマートフォンアプリでコミュニケーションを取れる「しんきんdirect」であれば、そうした顧客とも接点を保てると考えたのです。また、操作性がシンプルで、PC操作に不慣れな方でも使いこなしやすい点もポイントになりました。
2つ目は、ビジネス用途に特化している点です。私用のチャットツールはセキュリティ面に不安がありますし、プライベートのアカウントを仕事用に共有することに対しては顧客、職員ともに抵抗感があるでしょう。信用金庫のコミュニケーションに特化した「しんきんdirect」であれば、これらの課題をクリアできると考えました。

顧客約300人とのやりとりのペーパーレス化、セミナー運営も効率化

岡田様:
現在、対顧客シーンでは、ITツールへの抵抗感が比較的少ない若手経営者や定期的な訪問が困難な遠方の事業者など約300人に「しんきんdirect」を導入してもらっています。遠方の事業者には、当地域でチャレンジするためにこちらに拠点を構え、従来の拠点との間を往復される事業者も含まれます。
一斉案内によりディスクロージャー誌の発刊をお知らせしたほか、トークルームにより景況レポートやオンラインセミナーの案内を定期的に発信しています。これまでは紙ベースで直接または郵送でご案内していましたが、一度に案内できるようになり非常に楽になりました。

太田様:
対顧客面での最大の導入効果は、ペーパーレス化の進展です。若手経営者の会向けのセミナー案内を例に挙げると、従来は開催のたびに会員約250人に案内文書を印刷、封入、郵送していたものが、現在では「しんきんdirect」上でほぼ完結します。郵送費や紙代を削減できたのはもちろん、業務効率化につながりました。
特筆すべきは、こうした業務効率化の結果、セミナーの開催頻度を増やせたことです。コロナ禍でオンラインセミナーが日常になったこともあり、開催頻度は年1回程度から年6回まで増加しました。セミナーには毎回約50人もの方に参加いただいます。今後は、多くの方にご参加いただき、金融リテラシー向上などにつなげたいと考えています。
デジタル化と顧客との密なやりとりとは相反するようなイメージもありますが、実際には逆でした。顧客との接点が増え、関係をより強固にできたことに驚きを覚えています。信用金庫が大切にする「Face to Face」のコミュニケーションの新たな形が見えてきたように感じました。

迅速な情報共有はBCP対策に直結
災害時訓練ではわずか15分で現状確認が完了

太田様:
金庫内のコミュニケーションでは、災害発生時などの緊急時の対応に「しんきんdirect」が役立っています。実際に、2021年2月に福島県沖で震度6強の地震があった際には、常勤役員間のトークルームで連絡を取り合い、地震発生から40分ほどで緊急対策本部の立ち上げについて合意形成できました。
この経験を受け、顧客への案内が一巡した2021年6月から常勤役員と各店長が参加するトークルームを作成し、緊急時の対応を「しんきんdirect」上で完結できる仕組みを整備しました。具体的には、セレクト機能での被害状況の報告を指示、各店長から現場の状況を写真で報告などにより、トークの参加者間で状況をスピーディに共有できるようにしました。
2021年12月にはこの仕組みを使って抜き打ちで災害対応訓練を行いました。対策本部の立ち上げ通知に併せて報告内容を指示したところ、15分足らずで、各店長の所在地や店舗内の状況を把握するとともに、報告内容を集計できました。各メッセージの既読・未読状況から指示の伝達状況が可視化でき、未読の店長のみ連絡するだけで済んだのがポイントです。

緊急連絡画面

岡田様:
同じく緊急事態対応として、サイバーインシデントへの対応にも「しんきんdirect」の活用を進めています。12月に実施された内閣サイバーセキュリティセンターによる「分野横断的演習」においては、インシデント対応チーム専用のトークルームを設定し、訓練を受けながら「しんきんdirect」の活用方法を担当者間でアイディアを出し合いました。訓練を通じて課題となった各部署の状況報告は、部署毎の「ノート」を作成し、インシデント事象を記入することにしました。また、報告書の様式もノートに格納しておくことで、同事象が発生した際は、本トークルームで完結できる仕組みを構築しました。

サイバーインシデント画面

太田様:
緊急時の対策にゴールはありません。まだまだ改善できることはあると思いますので、いざという時に備え、今できることを取り組んでいきたいです。

デジタルとアナログを使い分け、
顧客との新たなFace to Faceの確立へ

岡田様:
「しんきんdirect」には、もっと有効な活用方法があると思います。顧客との接点としては正直対面や電話の優位性は高いですが、ちょっとしたコミュニケーションや連絡ツールとしては「しんきんdirect」が優れていると思います。連絡ツールとしては電子メールがあると思われるかもしれませんが、金融庁のアンケートでは多くの地域金融機関が営業担当者の個人単位でメールアドレスを設定していないことがわかりました。当金庫も、情報管理の観点から個人単位のメールアドレスを設定していないだけでなく、利便性は低下しますが「direct」で可能なファイル添付も通常は不可にしています。この課題に対して、お客さま、当金庫担当者の双方向ではなく、お客さまからの送信だけはファイル添付を可能にすることができれば金融機関との連絡ツールとして利便性が高まり、融資相談にも迅速に対応できると思います。同様に緊急時の対応は整備を進めていますが、課題も感じており、既存の安否確認ボットの活用はその答えになるかもしれません。また、近日中に実装予定のスケジュール機能ではセミナー案内との連動による相乗効果が期待されるかもしれません。
今後も様々なデジタルツールを活用し、新たな時代の顧客との接点のカタチを構築していくとともに、業務の効率化を実現したいと考えます。

あぶくま信用金庫 理事長 太田 福裕 様

太田様:
これからの数年で、金融業界のデジタル化は急速に進展するでしょう。しかし、信用金庫が大切にするFace to Faceの精神は変わりません。デジタルとリアルの役割分担を改めて整理しつつ、最適なコミュニケーションの在り方を模索していきたいです。

※記載内容は2022年1月時点のものです。

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